アミュ:「勇者?」
セイカ:「そう。おとぎ話の勇者だ。数百年に一度、魔王とともに転生する人間の英雄。今回の勇者は君なんだよ。君には殺される理由があるんだよ。力があるものは、力がないものから恐れられ、疎まれ、排除される。いつの時代でも、どんな世界でも。逃げよう、アミュ。ここにいたら謀殺される。」
その時、人の気配がします。
セイカ:「やあ。グライ兄。随分早い再会になったね。決闘でもするかい?まだ約束を果たせていなかったね?」
フィオナも現れます。
フィオナ:「その必要はありませんわ。」
セイカ:「フィオナか。そうか、君は見えていたんだな。この瞬間が。此度の釈明、してくれるのか?それとも、上に控えている多数の騎士にあいてさせるのか?」
フィオナ:「あなたを相手にする無謀さは理解しています。ここには説明に参りました。」
セイカ:「では、なぜ、アミュは殺されようとしているのか?魔族という明確な敵がいるのに、自ら優位性を捨てるのは?」
フィオナ:「かつてはここも小さな国で、そのなかで魔族と戦う勇者は頼もしい存在でした。しかし、今、帝国も魔族も軍備は整った。勇者も魔王も既に時代遅れの存在なのです。もはや勇者一人では都市の制圧もままならない。」
セイカ:「それがどうしいた?勇者を殺す理由がどこにある?捨て置けばいいだろう?」
フィオナ:「勇者は存在するだけで、戦争の火種なのです。魔族も同じ考え。彼らが刺客を送ってくるのは、争いを優位にするためでなく、火種を消したいのです。加えて言えば、アミュさんがかつての勇者の強さをえることはありません。」
セイカ:「なぜだ?」
フィオナ:「あなたがいるからです。セイカ様。勇者の強さは困難に打ち勝って得られるもの。あなたは、アミュさんにそのような状況を許しますか?帝城に攻め込むほど強く、優しいあなたが。あなたが勇者に執着するのが強さなら、セイカ様の思う通りにはならないと思います。」
セイカ:「僕の思い通りにならないなら、見殺しにしろと?死ぬざまを大人しく眺めていろと?」
フィオナ:「学園派閥と私はアミュさんを守る方向で動いています。ここは、引いてください。アミュさんは私が全力で守り、学園へお返しします。あなたが今夜の咎をおうこともありません。」
セイカ:「屋敷で僕とアミュに会いたがったのは、この時の布石か?」
フィオナ:「ええ。そうです。覚えてますか?戦技(チェス)で、勝った方は何でも一つ言う事を聞かせられるという賭けを。」
セイカ:「君たちの何を信じろというんだ?」
フィオナ:「・・判りました。グライ、警備を解きなさい。」
グライ:「セイカ。」
セイカ:「何も言わなくていい。グライ兄。」
フィオナは馬車と食料、路銀を用意し、二人を解放しました。
フィオナ:「さあ。行ってください。」
ここに、セイカとアミュは、帝国と袂を分かつことが決定しました。セイカは前世と同じ道を歩き始めたのかもしれません。


















